真空管アンプ修理
Dynaco Mark-III修理
真空管アンプ修理 Dynaco Mark3 パワーアンプ修理
真空管ラジオ修理ドットコムでは、真空管アンプの修理も承ります。
お客様より修理のご注文をいただきましたダイナコ(Dynaco)Mark3 真空管式モノラル パワーアンプの修理内容をご紹介いたします。
■真空管アンプ修理概要
この真空管アンプの修理は、お客様のご要望により、故障部分の修理の他、モノラルアンプを2台使い、ステレオアンプとして使用するための整備も行います。2台のアンプの特性を揃えるため、修理は2台とも同じ場所に同じ部品を使用します。2台のアンプは全て同じ部品で生まれ変わります。
尚、このスマートフォン版ページでは、1台目の修理のみを掲載しています。全てをご覧になるには、パソコン版ページをご覧くださいませ。
■Dynaco Mark3(DYNAKIT MARK-III)
1976年頃に既存の管球式モノラルパワーアンプのキット版として、ダイナコから発売され、終段管に6550(KT-88)を採用したプッシュプル(PP)方式で、定格出力:60W、瞬間140Wのハイパワーアンプです。
使用真空管: 6550(KT-88)x2、6AN8、GZ-34(5AR4)
Dynaco Mark3 電源周り修理 改造撤去
【改造部品撤去】
このDynaco Mark3の電源には、30uF(x1)、20uF(x3)の複合ブロックコンデンサを使用していますが、そのブロックコンデンサの30uFと、左側写真中央にあるブルーの電解コンデンサ20uFが直列接続されているため、合成静電容量が12uFと減り、少し容量不足の状態になっていました。
(写真右側を参照)
上記の接続方法は、コンデンサの耐圧を上げる事ができますが、静電容量が減りリップルノイズ(電源ノイズ)の原因となりますため撤去しました。
電源周り修理 ブロックコンデンサ交換
【複合ブロックコンデンサ交換】
Dynaco Mark3に使用されている複合ブロックコンデンサの30uFが容量抜け・絶縁不良でしたため交換しました。
Dynaco純正のブロックコンデンサの耐圧は525Vで、あまり余裕がない状態でしたが、交換したブロックコンデンサの耐圧は550Vですので、少し余裕があります。
交換前のブロックコンデンサの筐体は、シャーシにハンダづけされていないため、コンデンサの取付にガタつきがあり、接地(アース)面でも問題がありました。
写真(右)は、お客様がご用意してくださいました複合ブロックコンデンサに交換した状態です。
入手困難の真空管や部品を探す際、時間やコストが掛かる場合がありますため、お客様の手持ち部品がございましたら使用いたします。持ち込み部品を歓迎いたします。
複合ブロックコンデンサの配線
【複合ブロックコンデンサの配線】
写真(左)は、交換前のブロックコンデンサの配線です。
グリーンの丸印4箇所は、コンデンサのマイナス(筐体)端子ですが、シャーシにハンダづけされていません。古い抵抗は、少し抵抗値が増えていたので交換します。
写真(右)は、交換したブロックコンデンサにB電源を配線し、初段電源の抵抗も交換した状態です。
この写真では見にくいのですが、ブロックコンデンサのマイナス(筐体)は、シャーシに2箇所ハンダづけ(接地)しました。次の写真をご覧下さい。
ブロックコンデンサの配線と整流管交換
【複合ブロックコンデンサの配線】
写真(左)は、ブロックコンデンサのマイナス(筐体)をシャーシに2箇所ハンダ付けして、しっかりと固定・接地した状態の画像です。
電源トランスのアース線も、ブロックコンデンサのマイナス(筐体)に直接配線する形に変更しました。
写真(右)の整流管 5AR4は、Dynaco Mark3本体と一緒にお預かりした真空管で、これに交換します。
Dynaco Mark3 初段 真空管6AN8 基板修理(組み替え)
【Dynaco Mark3 初段6AN8基板修理】
この真空管アンプには、ハム音や音声が歪などの不良がみられ、故障診断の結果、初段の真空管(6AN8)周りに主な原因がある事がわかりました。
原因1: 部品の組間違え
原因2: 基板の絶縁不良
≪状態≫
プッシュプル(PP)回路において、正相と逆相のバランスが著しく崩れており、歪みや雑音の原因になっていました。
アンバランスの主な原因は、不適切な部品が取り付けられており、必要なコンデンサが欠如していました。[写真(左上)参照]
また、プリント基板の部品面にホコリ等の汚れが集まり、部品間の絶縁が悪くなり、隣の部品のリードやピンに電圧がリークしていました。[写真(右上・左下)参照]
特に取り外した抵抗器下[写真(右上)]の汚れからのリークが多く、真空管ソケット下も絶縁不良の状態でした。そのため全ての部品を取り外し、基板の裏表をクリーニングします。
尚、多少抵抗などの値に変化がみられるため、欠如した部品を含め、全て新品に交換します。
初段基板の清掃・組み替え後
【Dynaco Mark3 初段6AN8基板の清掃・組み替え後】
基板上の部品を全て取り外し、基板のクリーニングを行いました。絶縁テストの結果、問題がない事を確認しました。[写真(左上)参照]
初段6AN8真空管のソケットを含む全ての部品を新しいものに交換しました。初段周辺には誤差が少ないローノイズの抵抗を使用して、カップリングコンデンサには日本製で絶縁性が優れているメタライズドポリエステルフィルムコンデンサを使用しております。[写真(右上)参照]
このDynaco Mark3に当初よりある6AN8真空管は、ノイズが出たため、写真(左下)の6AN8真空管に交換しました。[写真(左下)参照]
一部、基板のパターンに傷み(パターン剥がれ)がありましたが、全て適切に修正を行いました。[写真(右下)参照]
バイアス回路 組み替え・調整
【バイアス回路電源部組み替え】
バイアス回路は、三極管を使用するアンプの中で非常に重要な役割を果たしています。
このバイアス回路が故障すると、出力管(KT88)に過電流が流れ破損するリスクがあり、整流管を含む電源系にもダメージが及ぶ可能性があります。
バイアス回路の電源にある電解コンデンサが絶縁不良で、少し膨張(変形)が始まっている状態で、整流用ダイオードのリードも腐食しており、近い将来故障する事が予想されます。[写真(左)参照]
写真(右)は、バイアス回路用電源部の組み替え後の状態です。
バイアス調整用可変抵抗交換など
【バイアス調整用可変抵抗交換とコンデンサ交換・移動】
上段でも書いていますが、バイアス回路は非常に重要な役割を果たしています。
バイアスレベルを調整する可変抵抗に接触不良やガリなどの不良があると、出力管などにダメージを与えるリスクがあるため、老朽化した可変抵抗はこの機会に交換します。
また、可変抵抗に取り付けてある電解コンデンサも膨張(変形)・液漏れが見られますので交換します。[写真(左上)参照]
写真(右上)は、密閉された可変抵抗に交換した後の様子です。コンデンサは安全のため、絶縁された基板の近くに場所を変えて交換しました。
写真(左下)は、シャーシ上から見た可変抵抗です。このシャフトをドライバー等で回して、バイアス電流を調整します。
ACプラグ付き電源コード交換
Dynaco Mark3 修理前と修理後
追加対策 電源トランスうなり軽減
【電源トランスのうなり軽減】
Dynaco Mark IIIの電源トランス(P-782)ですが、少々うなり音が出ます。一次側の入力のみの状態で通電テストしましたが、唸りがありますのでトランスの自体の問題と思われます。
P-782の資料を確認すると、50/60Hzと記載があります。1時間以上稼働させても、素手で触る事ができる範囲の熱量ですから、使用できると思います。
今、出来る対策として、コア(鉄心)の締め付けを強化する事です。標準ではトランス中央の2箇所をボルト締めしていますが、写真の通り合計6箇所をボルトで締め付けました。
アウトプットトランス(Z-216)も、コアの中央2箇所だけのボルト締めでは不完全ですため、6箇所ボルト締めにしました。
今できる対策としてもう一つ、Dynaco Mark IIIのシャーシに厚めの振動吸収コム脚を設置しました。
うなり音はだいぶ軽減し、修理完了です。
真空管アンプ修理費用
アンプ修理・修復
|
¥20,000 |
アンプ組み替え
|
¥30,000 |
(表示価格は税別)
当ページに表示している真空管アンプ修理費用は、真空管代・ブロックコンデンサ代・トランス代は含まれておりません。
お客様持ち込み部品での修理も承ります。